狐の嫁入り
シドニーは連日、雨模様です。
ネットの情報によると、一年を通して6月というのは結構雨が降る時期らしい。
皆さんは、雨好きですか?
僕は大好きです。
コンクリートの濡れた匂いや、降ってきた水の音。
のんびり部屋で本を読むでも良し、雨を楽しみに外に出るのも良し。
多くの人が雨ってやる気なくすじゃないですか。
僕ひねくれてるんでみんなが元気無い時、意味もなくテンション上がってくるんです。
お前らもっと元気だせよ!雨だぞ!!!!!って。
今日は普通の雨ではありませんでした。
狐の嫁入りでした。
皆さん狐の嫁入りってご存知ですか?
いわゆるお天気雨ってやつです。
地球ってやつは乙な奴で、雨と晴れを合体させちゃうんです。
憎めない。
そして人間というのはそれは狐の涙だー!なんつって狐の嫁入りと名付けるんです。
みんな洒落てるなぁ。
いつかの雨の日、宿題を忘れたかなんかでものすごく怒られたことがあった。
僕はずっと宿題をやらない側の人間だったので、黒板の左端にある「宿題未提出ブラックリスト」に名前がいつも載っていた。
面倒くさいから、先生怒らないから、遊んでいたいから、自分に都合のいいように言い訳並べていつも宿題はやらなかった。
そんなある日。ものすごく怒られた。
まあ当然なんだけどね。
あまりにも酷いですよと。
今だから脅しだとわかるけど、学校来なくていいなんて言われました。
雨で部活がせっかく休みで、友達と遊ぶ約束をしていたのに。
当初の倍以上の量の宿題を出され、教室に残ってやるよう言われた。
流石に逃げられなかったので、渋々ひとりで残ってやっていた。
ひとりの教室というのは不思議な感覚で、優越感というか、謎の高揚感に包まれる。
周りに誰もいないことを確認して、好きな曲を口ずさんだ。
友達の机に落書きなんかして、明日どんな顔して見るのかなんかを思い浮かべた。
ふと、好きな子の机を見た。
手紙なんか、机の中に入れてみようかな、
いやいや、気持ち悪がられるだろ。
男は面と向かって直接告白だろう。
ってそんな勇気もない。
名前書かないで、気持ちだけ伝える、とか
伝えた後どうなるのよ。
でも、今なら誰もいないし、そういうのもありなのかな、
「宿題終わった?」
窓から先生が声を掛けてきて、変な声が出た。
もう少しで終わると伝え、再び宿題をする。
結局手紙は書かなかった。
先生に宿題を見せに行く。
あなたはやればできるんだから、あと伸ばしにしないように。
怒られた後の、褒めってどうしてあんなに響くのか。
普段はちょっぴり嫌いな先生が、その時だけは大好きだった。
帰る頃には雨も落ち着き、小雨だった。
傘持ってきてないけど、まあ濡れて帰ろうか。
靴を履いて外に出ると、だんだん明るくなってきた。
先生にさようなら、と挨拶。
「狐の嫁入りですね今日は」
「何ですかそれ?」
「天気雨のことですよ」
「あなた明日からの成長を願ってのことですかね」
「明日からは宿題頑張ります」
その日からだろうか、雨が好きになったのは
まあ嘘なんですけど。
っていう狐に化かされたかのようなお話でした。
ところどころは本当ですから、そこはご想像にお任せします。
じゃあ。