夜更かしに珈琲を一杯

寝れない夜のお供に

落ちたタバコ

シドニーは、決して治安がいい街とは言えないと思う。

 

 

たくさんの人が路上に寝て、草を吸って、酔っ払って、騒いでいる。

 

周りからそう教えられた通り、僕はなるべく目を合わせはしない。

 

 

 

その日はあまり物事が上手くいかず、気が沈みきっていた。

シェアハウスに住んでいるが、今から家に帰ってルームメイトと顔を合わす体力も持ってない。

少しベンチで休憩することにした。

 

 

 

白い肌、黒い肌、茶色い肌。

 

イかしたスーツ、おしゃれなパーカー、毛玉だらけのスウェット、ちぎれたTシャツ。

 

歯のない人、片足のない人、毛が無造作に伸びている人。

 

 

英語、日本、中国語、韓国語、モンゴル語スペイン語

 

 

 

みんな人間だ。

 

 

 

そんなことをぼーっと考えていると、ひとりの男が前を通った。

僕は人を見た目で判断する派ではないが、それでも彼が裕福ではないことは伝わった。

 

伸びきった白毛、白いひげ、漂うきつい匂い、裸足。

 

しばらく彼を見ていたくなった。

立ち上がり、追い掛けた。

 

彼はずっと楽しそうだった。

物の豊かさが人を幸せにするわけじゃない。

綺麗な服を着ているから幸せなのか。

 

 

前を歩いている人が、まだかなり吸い残っているタバコをポイ捨てした。

男はウッヒョー!と騒ぎ出し、急いで拾って、火をつけた。

 

写真を撮りたいと思った。彼の存在を切り取りたい、と。

しかし聞くのも少し怖いし、かと言って盗撮もよくない。

 

悩んでいると、男は振り返った。

目があった。

 

 

「毎日楽しく生きてるか?」

 

って聞いてきた。

 

そしてガハハハ!!と笑いながらどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

 

答えられなかった。

 

幸せって、なんだろうか

人間ってなんでしょう