夜更かしに珈琲を一杯

寝れない夜のお供に

キャンバス

あなたは何色ですか?

 

 

と、問われた時に

僕は透明と答えた。

 

 

 

明るい人は、赤やオレンジ

静かな性格な人は青や白

虹色なんて答える奴は、きっと本当は水色や黒なんだろう

 

人は生活をしていくうちに、段々と自分の色を自分で理解していく。

 

僕は、透明と答えた。

 

それは、何色にでも染まれる

 

 

 

というわけではなく、無職だったのだ

 

 

彼は、転職活動の真っ只中

『あなたは何色ですか、それを踏まえた自己紹介を』

というお題で、彼は透明と答えた

 

 

透明と言えば、何もない、澄み切った情景を思い浮かべるだろう

僕のその回答は、読んで字の如く

空間を澄み渡らせた

 

 

無職のキザな解答に難色を示した面接官は

「では、次の質問です」

 

 

 

 

人生とは、大きなキャンバスに

「あなただけの色を塗っていく」

みたいな名言を多くの偉人が残してきた

 

なあ偉人。

転職活動でつまずいた僕は一体何色なんだ。

 

 

 

 

 

大学を卒業して

珈琲屋になるか、写真家になるか

どちらかを選ぶその選択に

休日や給料、成功や失敗は一切勘定されていなかった

 

若さは盲目

新しい環境が輝いて、何色にでも染まれると信じていた

 

そのどちらも僕にとっては真っ黒だとも知らず

 

 

私は写真家になろうと決心したが

2年と少しでその道は外れてしまった。

 

月の休みは6日

手取りは15万に及ばず

ボーナスや祝日を楽しむ友人たちが

虹色に輝いていた

 

それに比べて僕は真っ黒

報われるかもわからないこの先

いくらファインダーを覗いても

僕の行先は真っ暗だった

 

 

 

透明、と答えた面接は落ちたが

とある上場企業に拾って貰えた

 

年収は倍になり、土日祝日は休み

生活は前よりも豊かになった

 

 

 

豊かになったのだが、

僕の人生は決して華やかになったとは思えなかった

 

 

 

失ってから気づく大切さ

 

売れないシンガーソングライターの

オリジナル曲みたいな台詞だ

 

 

 

 

好きなことでは食っていけず

興味のないことでは充実を感じれず

 

いつだってないものねだりをする

贅沢な僕

筆を持っているのは自分だというのに

違う色の絵の具を塗る勇気は無い

 

キャンバスを真っ白に塗り直せば

また新しい色を塗れるけれど

今まで描いてきた作品を0にする勇気は無い

 

 

描いてきたのはお粗末な絵だけれども

仮にも自分の人生

 

透明な絵の具で塗ったこの絵は

裸の王様のように

周りからは見えなくとも

 

最後に自分にだけは鮮やかに見れたらいいな

 

 

 

と思いながら今日も22時まで残業をする絵描きだった